バナッハ・タルスキーのパラドクス
前々回、いきなりなんで群論なんかを復習したかというと、最近次の本を読んでいたため。
新版 バナッハ・タルスキーのパラドックス (岩波科学ライブラリー)
- 作者: 砂田利一
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2009/12/09
- メディア: 単行本
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バナッハ - タルスキーの定理とは、簡単に言うと
「球体を適当に有限個に分割して寄せ集めることにより、元の球体と同じ球体を2つ作ることができる」(8p)
である。これによって、3次元の球体はドンどこドンどこ増やしていくことができる、という不思議な定理だが、その不思議さのために、"パラドックス"とも呼ばれてしまっている。しかし、厳密に数学の定理なのである。
本では、不思議なこの定理が表すところを、数学初心者でもわかるようにやさしく、丁寧に解説してくれているというもの。僕は数学の専門ではないのだが、すごくわかりやすい。本質的なところが感覚的につかめるような内容になっていると思う。(おそらく、本質的なところは「面積もどき」(71p)のあたり。目からうろこでした。)
で、定理のキーワードとしては、"無限"と"群論"だったので、前々回群論を復習したのでした。
代数学はシンプルなところから始まってどんどん奥が深くなっていく。群論はその際たるもので、最近は、こういった本を読んで、数学の面白さを再認識しています。
ちなみに、巻末には実際の証明の内容が付記されていて、これもためになる。
- 群の作用とそれによる合同の定義、および 分割合同の定理
- "自分の部分が自分自身と分割合同"という逆説的集合の定義
- 逆説的集合の性質の調査 & 2文字自由群が逆説的集合であるということ
を提示した後、3次元(球体)と回転群についてこれを当てはめるという流れ。
考えたのは、2文字自由群はケーリーグラフに同型で、カオスや複雑系との関連がないかということ...