サブリミナル・マインドと京極ミステリ
前回、ゲーテの格言のあの2つを並べたのは、「知る」「行う」「経験する」「理解する」という認知や認識について、それぞれ辛辣に表現しているところがあったから。これで思い出したのが、以下の本。
- 作者: 下條信輔
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1996/10
- メディア: 新書
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素人が読んだ感想ですが、本書が煎じ詰めて説明しているのは
人は自分で思っているほど、自分の心の動きをわかっていない
ということ。認知の過程のいろいろな断面に対応する現代の心理学の理論を、豊富な実験例をもとに説明して、深くこのことを考えさせてくれる。実験例は、実は結構すごい(ことをやるよね科学は)。でもわかりやすい例なので素人なりに面白いと感じた。
特にこの内容で思い出したのは、京極夏彦の長編ミステリ。僕はあの分厚いシリーズを愛読していたのだが、「見えないのに見えていた」とか「未必の故意」「無意識の故意」なんていうのは、まさに京極が妖怪の説明としていたことではないか!!と。
あと、面白いと思ったのは、顕在的認知に対する潜在的認知について。
以下は僕の妄想だが、現代社会の多用なコミュニケーションにより、顕在的認知だけでなく潜在的認知も知らず知らずのうちに情報を他者(広く社会)に伝播しているのでは、と考えてしまう。そして、そのささいな情報による影響が伝播を繰り返すうちにどんどん大きくなって、やがて社会全体を変化させる波へと変えているのでは、とか。だとすると、この互いの潜在意識によるコミュニケーションも、意外と無視できない(でも潜在的だからやっぱり認知できないとどうしようもないのかな?)、定量的に考えて付き合っていく必要があるのだと...
...なんて妄想するとSFができそうだ。