歴史は「べき乗則」で動く
最近読んだ本について。
歴史は「べき乗則」で動く――種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学 (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ)
- 作者: マーク・ブキャナン,Mark Buchanan,水谷淳
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2009/08/30
- メディア: 文庫
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早川書房の<数理を楽しむ>シリーズは楽しく読める本が多い。この本はよくある複雑系科学の啓蒙書。最初あたりから中盤にかけては、多くのモデルを説明して、例の「べき乗則」の面白さを説明する。このあたりまでは楽しく読めるのだが、終わりのほうの本書の主旨たる「歴史物理学」のあたりになると、なんというか、クエスチョン、とは言わなくても、若干の消化不良な感じを受けてしまった。
いや、わかるのよ。よくわかる。歴史もべき乗則っぽいのは。今までの本書の説明から考えてもそうだし、たとえば、ドラえもんやバックトゥザフューチャーみたいなので出てくるタイムマシンパラドクスの要素として語られる初期値鋭敏性は複雑系だし、人間社会はかくも複雑ネットワークだから、著者の言っていることはしごく当たり前に理解できて、納得するし、激しく同意するのだけどね。
せっかくなんだから、もっと「おおっ」と驚かせるような知的な新鮮さがほしかったのだが、どちらかというと、「歴史」という複雑なものについての細かい具体例や理屈に終始してしまって、もう少し科学的に踏み込めないものか、と感じてしまったところである。
歴史という素材自体が非常に膨大な要素と事象の塊だから、難しいんだろうな...って、はて、"歴史"って何なんだろう?