Category Theory for scientists(David spivak) メモ ... 圏の定義

圏について(CT4S 4.1.1)

カテゴリ(圏)は、モノの集まり(collection)とそれらの関係について表したものだ。数学では、モノの集まり(collection)とそれらのpairの間の関係の型として解釈される。モノの関係性のたぐいを圏論として考えるとき、二つのルールをチェックする必要がある。それは、単純にいうと次のようなものである:「1.すべてのモノは、単純に自分自身と関係していて、2.もし、ある一つが他と関係していて、二つ目が三つ目と関係しているなら、一つ目は三つ目とも関係を持つ、ということである。」圏論においては、"モノ"をobjectsと呼び、"関係性"をmorphismと呼ぶ。

Definition 4.1.1.1.

圏 $C$ は次のように定義する。以下のような成分(A.objects , B.morphisms , C.identities , D.compositions)を持っていて、これらは、1~2の法則が成り立つ。

 

A. collections $Ob(C)$ は、objectsと呼ばれる要素である。

B.すべてのペア $ x,y \in Ob(C) $ は、集合 $ \textrm{Hom}_{C}(x,y) \in \textrm{Set} $とかく。xからyへのHom集合と呼ぶ。この要素は、xからyへのmorphism(写像)である。

C.すべてのオブジェクト $ x \in Ob(C) $ には、特別なmorphism $ \textrm{id}_x \in \textrm{Hom}_C(x,x) $ が存在する。これをxのidentity morphismと呼ぶ。

D.すべての三つのオブジェクト $ x,y,z \in Ob(C) $は、関数、

\[ \circ : \textrm{Hom}_C(y,z) \times \textrm{Hom}_C(x,y)  \to  \textrm{Hom}_C(x,z) \]

これを、合成則と呼ぶ。

 

$ x,y \in Ob(C) $ が与えられたら、morphism $ f \in \textrm{Hom}_C(x,y) $ が $ f: x \to y $ で定義できて、xをfのdomain、yをfのcodomainと呼ぶ。さらに、 $ g: y \to z $ が与えられたら、 合成則によって $ g \circ f : x \to z $ は、 $ \circ (g,f) \in \textrm{Hom}_C(x,z) $ と書ける。

1~2の法則は以下である。

 

1.すべての $ x,y \in Ob(C) $ では、すべてのmorphism $ f: x  \to y $ で次が成り立つ。

\[ f \circ \textrm{id}_x = f    かつ     \textrm{id}_y \circ f = f \]

2. どの$ w,x,y,z  \in  Ob(C) $であっても、$ f: w \to x  ,  g:x \to y  ,  h:y \to z $ のmorphismにたいして、次の2つの合成は同じである。

\[(h \circ g) \circ f = h \circ ( g \circ f)  \in  \textrm{Hom}_C(w,z) \]

 

この後、$Ob(C)$を集合と呼ばずに、"collection"と読んでいる点についてを説明している。"すべての集合の圏"=集合圏$\textrm{Set}$を扱うことがあるためであり、圏のobjectを"set"と呼んでしまうと”ラッセルのパラドクス”に陥ってしまうのだそうな。これを回避するために、"universe"という馬鹿でかい集合"$\kappa$"を定義するのだけれど、ここでは扱わない。これは数学的には厳密な定義を与える意味で重大なことで、マクレーンの本やそのほか圏論の資料にも説明があるのだが、spivakさんはラフな説明でほぼスルー。数学者ではなく、応用を考える科学者に対しては、ここで説明する必要はなかろうとのこと。

 圏の定義については、単純に有向グラフに、idと合成則がついたもの、という感覚を持って理解している。有向グラフで考えた場合のidの法則は、"同じ頂点への矢印が必ず入る"という制限が入るという意味となる。また、合成則の場合は、たとえば頂点 $ a,b,c $ があった場合、$ a \to b $と$ b \to c $の矢印があったら、$ a \to c $ という矢印も、"存在なければならない"という意味になる。この点で圏と有向グラフは異なる。(このあたり、spivakさんの教科書にもあるようにグラフのパスをmorphismとした$ \textrm{Path}$ が、僕の理解に重なる。)

 あと一点、有向グラフのイメージするときに注意しなければなければならないのは、有向グラフの頂点における"要素"は一つとは限らない、ということ。集合圏"$\textrm{Set}$"の場合は、$Ob(\textrm{Set})$は集合そのもので、$\textrm{Hom}_{\textrm{Set}}(x,y)$は、xからyへの集合の写像である。(このあたりはspivakさんのChapter2である)有向グラフの頂点に該当するのは集合で、その要素としては一つとは限らない。(もちろん圏によっては要素が一つということもありうるのだが)