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位相空間について

"位相"と聞くと、なにやらSFの香りがしてきますが、そんな話ではなく、純粋に数学の"位相空間"について復習する。

definition 開集合系と位相空間

集合$S$に対し、開集合系$\textrm{Open}(S)$とは、次の3つを満たす$S$の部分集合族のことである。

  1.  $S \in \textrm{Open}(S)$ 、かつ、$\varnothing \in \textrm{Open}(S) $
  2. 自然数$ m  \in  \mathbb{N} $ で $ \mathit{O}_1,\mathit{O}_2,\dots,\mathit{O}_m \in \textrm{Open}(S) $ なら次が成り立つ。\[  \bigcap_{k=1}^m \mathit{O}_k  \in  \textrm{Open}(S)  \]
  3. 任意の集合$\Lambda$(無限集合でもよい)に対し、各元$\lambda  \in  \Lambda$から$\mathit{O}_{\lambda}  \in \textrm{Open}(S)  $への対応を与えたときつぎがなりたつ。\[ \bigcup_{\lambda \in \Lambda} \mathit{O}_{\lambda}  \in  \textrm{Open}(S) \]

この開集合系$\textrm{Open}(S)$と元の集合$S$のペア、$( S,\textrm{Open}(S) )$を位相空間という。(位相を入れる、という動詞はこの開集合系を構成することである)

 

ややこしいが、開集合系の

  • 条件2は、部分集合の"有限"な共通集合もその開集合系に含むことを表し、
  • 条件3は、部分集合の"無限も含めた"和集合も開集合系に含む、

ということを示している。

 

ところで、以前までの説明で、Pre順序とPre順序圏$\textrm{PrO}$というのを書いた。

Category Theory for scientists(David spivak) メモ ... グラフとPre順序

Pre順序という構造は、実は、集合$S$の部分集合$\mathbb{P}(S)$に対しても当てはまる。

ある集合$S$の部分集合$ X,Y \in \mathbb{P}(S)$に対して、$X \subseteq Y$である場合に、Pre順序の表記$ X \le Y $と対応させれば、$(\mathbb{P}(X),\subseteq )$はPre順序である。つまり、集合の部分集合の関係を、順序関係に翻訳すればよい。

 

戻って、先の位相空間$(S,\textrm{Open}(S) )$の開集合系$\textrm{Open}(S)$を考えると、共通集合と和集合の条件2,3から、開集合系とは、対象集合の部分集合族から順序構造も維持される状態で選びだされたもの、ということがわかる。

最もよく見かける位相空間は、3次元のユークリッド空間だが、これに対しては、各点$x \in  S$の距離が定義できて*1、この距離によって、順序関係が定義されているとイメージしている。

 

さて次に、位相空間位相空間の間の連続写像というものについて、定義を見る。

definition 位相空間連続写像

位相空間$(X,\textrm{Open}(X) )$と、$(Y,\textrm{Open}(Y) )$における関数 $f:X \to Y$が、連続写像であるとは、任意の$Y$の開集合系の逆像が$X$の開集合となることをいう。

すなわち、

\[ Y  \in  \textrm{Open(Y)}    \rightarrow    f^{-1}(Y)  \in  \textrm{Open}(X)  \]

 が成り立つ$f$のことである。

なんだか不思議な定義で、$f$の逆像$f^{-1}$が定義の中に含まれている。これが何で"連続"になるかについては、多様体の基礎のキソにある、"位相空間の基礎のキソ"の資料がお勧め。(位相空間の定義自体のイメージ化もできるのでぜひ参考に)

要するに、集合側については、$f:X \to Y$なのだが、部分集合族で定義された開集合系においては、逆像$f^{-1}:\textrm{Open}(Y)  \to  \textrm{Open}(X) $となっているような写像ということになる。開集合系とは、部分集合の順序構造によって定義されている。直感的には、この順序の構成が逆像によって対応することで、連続が担保されている、と理解している。

 

この写像の定義を使って圏を構成することができる。つまり、いろいろな位相空間をオブジェクトとして、射を上述の連続写像とした圏である。これを、$\textrm{Top}$とかく。

位相圏$\textrm{Top}$と集合圏$\textrm{Set}$の間には、忘却関手が存在する。これは自明だろう。

\[ \textrm{Top}  \rightarrow  \textrm{Set}  \]

さらに、位相圏$\textrm{Top}$とPre順序圏$\textrm{PrO}$の間には、反変関手*2が存在する。これは、上記の連続写像の定義で$f^{-1}$を割り当てればよい。

\[ \textrm{Top}  \rightarrow  \textrm{PrO}  \]

 

最後に、"コンパクト"の定義についてメモる。

definition コンパクト空間

位相空間 $ ( X , \textrm{Open}(X) )$がコンパクトであるとは、その部分集合 $A$において、

\[ A \subset  \bigcup_{\lambda \in \Lambda} \mathit{O}_\lambda        \mathit{O}_\lambda  \in  \textrm{Open}(X)  \]

であれば、かならず有限個の$\lambda_1,\lambda_2,\dots,\lambda_n  \in \Lambda$を選んで

\[ A \subset  \bigcup_{k=1}^n \mathit{O}_{\lambda_k}        \mathit{O}_{\lambda_k}  \in  \textrm{Open}(X)  \]

とすることができること。(参:コンパクト空間 - Wikipedia )

これまたややこしくなっている。一番最初に説明した位相空間の開集合系の定義で3つ目の和集合の条件は、無限でもよかったのだが、これが無限であっても、有限個の集合で"上から押さえられる"様なイメージでいればよいかと。

ちなみに、任意の点$x  \in  X $に対して、コンパクトであれば、"局所コンパクト"という。

ちなみに、距離空間$M$がコンパクトであることと、$M$が完備かつ全有界であることは同値なのだそうだ。

 

数学とは、言語の学問なんだな。

*1:これを距離空間という

*2:反変関手とは、元の圏の射の矢印の方向を逆にした関手のこと